ラ・ターブルベール

Ezo Roseシリーズ

北海道の天然素材を使った化粧品や飲料などの開発を手がけて10年以上が経ちます。道内の山の町で育った私にとってハマナスは、旅先で目にした海の花というイメージでしたが、アロマテラピーに関わるようになってからは、ハマナスが持つ力に惹かれていきました。商品の素材を探すために、いくつかの栽培農家を訪れましたが、大量生産ができる園芸種よりも、海風にさらされ、雪に埋もれても、毎年夏になると力強い花を咲かせる野生のハマナスに魅力を感じました。

石狩浜の再生園のハマナスを活用するプロジェクトに参画したいと思ったのは、同じように野生のハマナスの魅力に惹かれた人たちの熱い思いを感じたからです。厳しい自然を生き抜いてきた石狩のハマナスも、時代とともにその数が減ってしまったといいます。かつての風景を取り戻そうと、地域の人たちが一体となって取り組む姿勢に心を打たれ、微力ながらも自社商品を通じて、石狩のハマナスの魅力を伝えていければと思っています。

手摘みのハマナスの花びらを白樺の樹液で濃縮蒸留した美容液を作りました。接客をしているときに感じるのは、多くの方が香りの強さを求めていることです。でも、ハマナスはほのかな香りしか感じることができません。それを物足りなく感じる方もいますが、野生の花ならではの香りであることをきちんと伝えると、ハマナスに興味を示してくれます。生産性を考えれば、園芸種の方が安定しているし、大量生産もできますが、年によって出来が変わってくるのも野生だからこそ。そんなストーリーを含めて、この商品を気に入っていただけたら嬉しいですね。

ホコノンノ 

石狩で生まれ育った私にとって、ハマナスはあまりにも身近な花で、日常の風景の一部でしかありませんでした。親の介護を機に、当時暮らしていた札幌から故郷の石狩にUターンしたのは20年ほど前。かつて石狩の中心地だった本町は、市役所が移転され、商店も減り、町はすっかり寂しくなっていました。そして、子どもの頃、当たり前のように目にしていたハマナスがだいぶ減ってしまったように感じました。

そんなときに、石狩に原生のハマナスを再現しようと活動している「ハマナス再生プロジェクト」のメンバーに出会ったのです。彼女たちは石狩の出身ではないけれど、ハマナスの花や実が持つ力を活用しながら、ハマナスによって守られる海辺の自然を後世にまで残していきたいと考えていました。そんな話を聞くうちに、「ハマナスってそんなに素晴らしい花だったんだ！」と気づかされ、故郷の石狩のために何かしたいと思うようになったのです。

実家の後藤商店は文具や日用雑貨を販売する町の商店ですが、このたび初めて、ハマナスの花と実から抽出したエキスを使ったオリジナル商品『ホコノンンノ・モイスチャークリーム』を開発・販売することになりました。子どもの頃は日常の風景の一部にしか思っていなかったハマナスで、オリジナル商品を開発する。私にとっては、大きなチャレンジでした。ハマナスが持つ自然の強さが、私に勇気を与えてくれたのだと思っています。

北海道ティーセレクション

ハマナスとの出会いは、今から5年前。車の中で聞いたラジオがきっかけでした。番組で紹介されていた「ハマナス再生プロジェクト」で、石狩産のハマナスで商品づくりをする企業を募っていることや、ハマナスの花はバラのような香りがしてお茶にして飲めると聞いて、「これだ！」と思ったのです。

 当時、私は観光客向けの商品開発を進めていて、お茶に使える北海道の素材を求めていました。さまざまな素材で試作を重ね、ハッカ緑茶ティーバッグ、ラベンダー緑茶ティーバッグ、とうきび茶ティーバッグの商品化が決まり、次なる素材を探していたところだったのです。

 ハマナス再生プロジェクトへの参画企業は、花びらの収穫を自ら行い、できる範囲で畑仕事に協力することが原則。まさか自分が収穫をするなんて思いもしませんでしたが、やってみるとこれがまた楽しい。ジーパンに長靴姿で畑に入って、商品の素材となる花を摘むなんて、サラリーマンには得がたい貴重な体験です。

摘み取った花びらはすぐにフリーズドライの工場へ。冷凍乾燥すると、10kgの花びらが1.5kgほどになり、それを国産緑茶にブレンドしてティーバッグに詰めます。ハッカやラベンダーに比べてハマナスの香りはおだやかなので、たくさんブレンドしたくなりますが、貴重な野生のハマナスですからね。最初にふわっと香るぐらいに抑え、あえて控えめに仕上げています。

（「香りの植物文化誌シリーズRugosa Vol.5_2018.4.15_発行/香りの通信舎」より引用）

ハチミツとドリンク

初めて石狩海岸を見たときの感動は今でも忘れません。浜辺に力強く咲く野生の花たち。どこかアイルランドの海岸を彷彿とさせるその景色に、私はすぐさま惚れ込んでしまい、この景色を残したいと思ったのです。

東京から移住し札幌に設計事務所を構えていましたが、健康を損ねたことから、食生活やライフスタイルを見直したいと、石狩に移り住んだのは11年前。新天地で始めたのは、養蜂業とハーブの栽培でした。私たちが目指しているのは、自然の摂理に沿った養蜂スタイル。抗生物質などの薬品を一切使わず、定置養蜂にこだわり、できる限りミツバチに負荷を与えないようにしています。また、ハチミツ本来の栄養素を失わないように非加熱のハチミツづくりに取り組んでいます。

ハマナスの魅力に引き込まれていったのは、ハーブの専門家向けのセミナーがきっかけでした。そのとき初めて体験したハマナスの香りにとても驚きました。ハマナスの香りは不安やイライラをしずめ、明るく前向きな気持ちにさせるそう。確かに、ハマナスの群生に身を包まれたときに、私はとても幸せを感じます。そして、ハマナスとこの風景を未来に残したいと、「ハマナス再生プロジェクト」のメンバーとしても活動しています。

ハマナスが持つ力は、いろいろな商品（もの）を生み出します。私はハチミツと花びらで「ハマナスハニー」を、ハマナスハニーから「ハマナスウォーター」を作りました。ハマナスは蜜を出さないのでハチミツは採れませんが、花びらを漬け込むことで、ハマナスのほのかな香りとピンク色が楽しめます。ハマナスを素材として活用しながら、石狩海岸の自然を守る。私の第二の人生はハマナスとともに歩んでいます。